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    「よし。今行く」

    が、一方盛子もまさに自分の幼時を知つていると云ふ見知らぬ人から声をかけられた時のやうに、目をぱちくりさせ、好意のまじつた当惑と云つたものを感じていた。

    「――?」

    それは背広姿に、遠目にもはつきりと判る緑色のソフトをかぶつた男であつた。

    後で馬がいないと云ふので騒ぎだつた。

    と、云つた。彼は殆ど房一の前に立ちはだかつた恰好だつたが、もぢもぢして、何だか自分を小さく感じていた。房一と目を合せると、すぐに外らせて、急にぐつたりとした様子になりながら、

    と、徳次は叮寧にならうとして一種奇妙な言葉づかひになりながら、

    「どなたか知りませんが、この男が御騒がせしたさうで、御無礼でした」

    心持照れ臭さげにしながらも、盛子は快活などこか家庭的な確しつかりさといつた風なものを現して、この一日造りの漁師達を眺めた。

    「をかしな男だな」

    「ふうん、潰れるだらうな」

    「閉口でしたな」

    御大典とそれにつゞく奉祝日は瞬またゝくまに過ぎ去つた。

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