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「あんまり、ぢつとしとつてもな、身体が生なまに、なるもんぢやから」
「御病人はどちらで?」
「折角のところを、突然でまことに失礼でありますが」
「もうこんなに暗くなつているのにね、何してるんでせう」
「あれなら、私の方からいゝやうにしときます」
練吉は一人で感心し、それでも足りないと見えて、房一に呼びかけた。
「さうなんですよ。まあだ帰らないの」
「今晩、寄せてもらつてもえゝですか」
その外から見れば屋根と築地塀だけのやうな家の前で、三人の男が立つてしきりと話していた。
「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」
「な」の字さんもわたしも足を止めながら、思わず窓の中を覗のぞきこみました。その青年が片頬かたほおに手をやったなり、ペンが何かを動かしている姿は妙に我々には嬉しかったのです。しかしどうも世の中はうっかり感心も出来ません、二三歩先に立った宿の主人は眼鏡めがね越しに我々を振り返ると、いつか薄笑いを浮かべているのです。
「うん、もうさつき帰つたよ」