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    房一は患者の前にもどつて来た。

    ほんとにさうだ、忙しい身分なんだ、どうしてそこに気がつかなかつたらう、――と、徳次は瞬間本気にさう考へ、自分のはしたなさを悔くやんでいた。

    「ふうむ」

    「そうしてそのお松と言う女は?」

    と、無邪気に、呆あきれたやうに云つた。

    「途中から帰つて来たんだよ」

    「それが、その、来ないわけがあるのさ」

    「どうも、済んまへんでした」

    「いや、わたくしもね、すぐさう思つたんですが、どうも、こんなところで、思ひがけなかつたもんで――さう、さう、先日は失礼しました、つい出ていたもんですからお目にかかれなくつて、そのうち伺はうと思つていたんですが」

    「いや、挨拶まはりですよ。どうぞよろしく」

    盛子は風呂場の入口で上はずつた声を出した。

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