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五
房一は患者の前にもどつて来た。
ほんとにさうだ、忙しい身分なんだ、どうしてそこに気がつかなかつたらう、――と、徳次は瞬間本気にさう考へ、自分のはしたなさを悔くやんでいた。
「ふうむ」
「そうしてそのお松と言う女は?」
と、無邪気に、呆あきれたやうに云つた。
「途中から帰つて来たんだよ」
「それが、その、来ないわけがあるのさ」
「どうも、済んまへんでした」
「いや、わたくしもね、すぐさう思つたんですが、どうも、こんなところで、思ひがけなかつたもんで――さう、さう、先日は失礼しました、つい出ていたもんですからお目にかかれなくつて、そのうち伺はうと思つていたんですが」
「いや、挨拶まはりですよ。どうぞよろしく」
盛子は風呂場の入口で上はずつた声を出した。